読書の時間

正義と幸せのモノサシ

小川洋子 「琥珀のまたたき」

3人姉弟のお話。長女のオパール11歳,長男の琥珀(こはく)8歳,そして次男瑪瑙(めのう)5歳は,パパの残した別荘にママと暮らしていた。ママの教えで,自分の名前を『こども理科図鑑』から選び,それ以前の名前をなくした。

彼らは,それはそれは小さな声で生活をしていた。
なぜって,壁の外には魔犬がいて,いつ襲ってくるか分からないから。
魔犬は,末っ子の女の子をママと3人姉弟から奪ったのだ。
ママは,二度と悲劇が起こらないように,子どもたちを守らなければいけなかった。

このお話は,真ん中の男の子である琥珀の視点,そしてアンバー氏と語る「私」の視点で描かれている。

ママが魔犬から身を護るためのツルハシを持って仕事にいっている間,子どもたち3人は別荘で,自分たちで遊びを生み出して素敵な時間を過ごしていた。
「オリンピックごっこ」,「事情ごっこ」,音のならないオルガンに合わせて歌う小さな声の歌,寝る前にお話をしてくれるオパール,瑪瑙のシグナル先生,琥珀の左目の景色・・・。
知らないことは,なんでも図鑑が教えてくれる。髪の毛もママが丁寧に切ってくれる。
でも,ママの作ってくれる服は,彼らにとってどれも小さすぎるサイズだった。

そんな日々において,外との接触を少しずつ得ることとなった3人。彼らにとって暴力的に大きな音,見たことのない世界との接触。
ママとの約束をこっそりと,少しずつ,少しずつ,ママを傷つけないように破る。
どこまでも優しく冷静なオパール,無邪気な瑪瑙,図鑑との時間が増える琥珀は,やがて壁の外に出る。
それを人々は「救出」といった。

3人姉弟は,外の世界を知っていくことで,それぞれのモノサシを得る。
壁の外側の人たちの声・・・壁の内側の彼らの声・・・。

小さな声は,私たち読者に何を伝えてくれているのか。

大きな声が注目される,この世の中で,小さな声を聞くことの大切さを教えてくれる一冊。

何が幸せで,何が正義なのか・・・。

とても音の小さな物語なのに,しっかりと彼らの声が聞こえてくる,とても不思議な時間でした。
ぜひ,読んでみてください☘

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少しずつ小さなこころみを重ねて進めていきます☘ ウラル大学,モスクワ言語大学に留学していました。

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